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 『パリを弾く
──日本人ピアニストのフランス生活事情──

新田美保(NITTA MIHO )著

■パリの屋根の下、楽しきかな、ピアノ人生!

●体裁四六型 並製 224頁 定価(本体)1,800円+税 ISBN4-88323-132-1 C0095 

パリ生活13年、幼い時からの夢を実現、「パリはわが故郷」になった。パリの屋根の下でピアノ教師と演奏家を見事にこなして生きるMIHO MIHOの恋したパリを彼女とごいっしょに旅をしませんか! MIHOの奏でるフランス生活を満喫してください!

■本書の目次より■プロローグ――留学/憧れのパリ生活/ろう/そくの明り/鏡は美を映す/老人問題/初めてののヴァカンス/コンセルヴァトワールの功績/チップは甘えの構造/コンクール/モンシェリーの威力/ラヴェル寮/ラヴェル寮現象/ホモセクシュアル/こわーいペットの話し/試験/歯痛/ラヴェルの家/外科医の賭け/優しさの秘密/モーツアルトの性癖/ある夏のヴァカンス/クレッシェンド/ザ・コレクショナー/食文化の探求/プロテインダイエット/ランジュ・ギャルディアン/素朴な味/多面体の街/別れ/静の日々/日本脱出作戦/駆け落ち/エピローグ

「まったくもって、こんなに人生を束縛なしに、常軌を逸して、完璧に楽しみきっているパリの日本人女性がいるだろうか。彼女は過激でいて、さらに見事な音楽家である。やりたいことをいっぱい持っていて、自由奔放だ。多くの男たちを恋に酔わせ、大都市のプライベートなソワレ、オシャレなな場所に通じていて、そんな彼女が今宵?……本書は、夢を描いている人、人生に退屈している人、ただいま悲しみに沈んでいる人、社会に落胆している人たち、このような人びとに生きる喜びとあふれ出る魂の輝きをともにできるよう誘いかけ、人生の楽しみかたを教えてくれる。」ミッシェル・レノマ(「レノマ」の創設者)「オビ添え書き」より

書評「軽やかな比較文化論」 中国新聞・読書欄 03.7.13
 ピアニストである著者は広島市の音楽大学を卒業した十三年前、留学先であるパリの土を初めて踏む。早々に体験するのは、九十歳を超えるお年寄りからのプロポーズだ。初対面からわずか五分後、病気の後遺症の震える手で若い著者の手をとり、かき口説く姿に悪びれた様子がない。
 かと思うと、友人と出掛けた高級レストランで、教養あふれる中年女性二人がささいなことで取っ組み合いのけんかをするのを目にする。そんな、屈託を抱えず、いい意味でのエゴをむき出しにしていける風土にたちまち「私はパリに恋をしてしまった」と書く。本番はフランスヘ永住を決意した著者が、「エゴイストが安らげる街」パリヘのオマージュをつづった十三年間の生活記録である。
 「エゴイスト」を自認する著者は、日本で過ごした少女時代、いつも生きにくさを感じていたという。団体行動が何より苦手。修学旅行では、行く前から「他人にべったり合わせる」数日間を思って「どんよりした疲労感」におびえ、旅行中はみんなの前で笑顔で頑張る自分に精神的疲労感をいっそう深め……。
 協調性に欠ける自分をいつも意識し続けて生きていかなければならない日本。それに対し、エゴを封じ込めず、ぶつけ合うことで築いていく人間関係を大切にするのがフランスの文化であるとする。体験を生かした分析は、日仏の比較文化論としても興味深い。
 同性愛看であることに悩み、家族に打ち明けられず死んでいった日本の友人の不幸な思い出を引き合いに出し、結婚制度にも言及する。フランスでは内縁関係にあたるパクスという婚姻を法的に設け、同性愛者にも適用きれているという。重いテーマも軽やかにこなす語り口が心地よい一冊。

 

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